いつになっても試行錯誤と学びの毎日

とある教育コーディネーターが学校でやってきた実践と失敗の数々

Chat GPTを探究活動でどう使うべきか

Chat GPTを教育にどのように取り入れるか議論がありますが、その前に高校生の身になってChat GPTを使ってみました。

Chat GPTはこちらからアクセスできます。

openai.com

 

フードロス削減をテーマにChat GPTを使ってみる

例えば地域での探究において、「フードロス削減」をテーマに、自分たちに何ができるかを考えるため、Chat GPTを使ってみます。

フードロスは自分達にどのような影響を与えるのかを聞いてみました。

最初の動機づけとしてはこの程度の問題提起で良いかもしれませんが、Wikipediaに出されているレベルの情報な気がします。

では次に、フードロス問題の解決のためにできることを聞いてみました。

高校生でできるフードロス削減の方法を聞くと、この5つを提示してくれます。

1-1)食品の購入や準備において無駄を減らす

1-2)フードバンクへの寄付

1-3)スーパーやコンビニでの買うものの際には、食品ロス削減に取り組んでいる企業を選ぶ

1-4)学校での食事において無駄を減らす

1-5)農家や食品メーカーを支援する

条件をもっと絞れば、より具体的な解決策を提示してくれるのだろうと思います。

 

次に、高校生という縛りをなくしてフードロス削減のための方法をChat GPTに聞いてみました。

2-1)食品の購入を計画する

2-2)食品の保存方法に気を配る

2-3)食品を寄付する

2-4)食品を再利用する

2-5)食品を分け合う

の5つを提示してくれました。

1-1)と2-1)、1-2)と2-3)1-4)と2-5)も同じような内容と言えるでしょう。

Chat GPTにとって、「高校生」と「私たち」では少しの違いがあるようです。どこで食べるのか、どのように食材を入手するのかによる違いなのでしょう。

 

自分以外の思考の視点を獲得できる

Chat GPTは探究活動の解決策を考える時に、自分の知識や技術、経験を補うことができる可能性があります。上記のような高校生でできる解決策、一般的にできる解決策を示してくれました。こうしたアイディアを募ることが可能になります。アイディアは、知識や技術、経験によって選択肢が増えてきますが、その経験値が低いと、思いつく選択肢が増えてきません。そこで、Chat GPTを活用しましょう。

一方で、自分の頭の中で考えるということも重要になので、プログラム設計者はChat GPTを活用するという前提で発問や活動を作ると良いのではないでしょうか。

そのため、プログラム設計者的には、

  1. Chat GPTに聞いてみる
  2. Chat GPTが提示してこなかった回答を個人で考える
  3. Chat GPTが提示せず、自分で考えた回答をグループで共有する

ということを前提として、ワークシートにChat GPT欄を作るなどの工夫が必要です。

 

条件が絞られていないChat GPTの回答は、一般的で誰でも思いつく回答なので、そこにクリエイティビティはありません。以前、フードロス削減について生徒が行なった「食品廃棄ロスになっている野菜を使ったレトルトハンバーグカレー」は出てきていませんね。その意味で、条件が絞られていないChat GPTの回答は、”教科書的な回答”です。

 

しかし、条件を絞ってChat GPTに聞いてみるとアイディアをくれました。

教科書的な回答から、条件を絞ることで少しクリエイティブな回答を得ることができました。ということは、Chat GPTの使い手自身が、条件を絞りながら、アイディアを募るということが良いのだと思います。

(褒められたのも嬉しいですね)

 

Chat GPTを使う児童・生徒には、この「条件=オリジナリティ」を考えるワークを入れると良いでしょう。

  1. Chat GPTに聞いてみる
  2. Chat GPTが提示してこなかった回答を個人で考える
  3. Chat GPTが提示せず、自分で考えた回答をグループで共有する

ではなく、

  1. Chat GPTに聞いてみる
  2. 自分ならではの条件を入れてChat GPTに聞いてみる
  3. Chat GPTが提示してこなかった回答を個人で考える
  4. Chat GPTが提示せず、自分が考えた回答をグループで共有する
  5. グループの中で、自分達がわくわくし、やってみたいと思う解決策に取り組む

というようなプログラム設計をすると良いのではないかと思います。

Chat GPTが示す情報をそのまま使ってももちろん良いのですが、情報の精査がされていないし、どのような論文を引用しているのかもわからないので、そのまま使うことができません。

この意味では、Chat GPTに論文やレポートを書かせるのは良くないですが、アイディアを得るには最適です。

 

探究活動のテーマ設定や動機づけに使ってみよう

最近では、テーマ設定や課題設定を難しいと思う生徒もいるので、Chat GPTに聞いてみることにします。

東大の総合型選抜狙いで、テーマ設定と考えてみたところ、東大の特徴を示しながらこんな研究はどうでしょうか?と提示してくれます。一般的な回答のようですね。

 

しかし、こういうことも聞いてみました。

テーマ設定においては、自分が関心のあるテーマを選ぶことが大切だと言われつつも、こうして提示してもらいながら、さらにその背景情報を提示してくれるので、探究活動はもちろん卒論のテーマ設定にも使えるような気がします。

また、Chat GPTの性質をうまく使うことで、他の人がやりそうにないテーマ設定が生まれそうです。

 

これまでのテーマ設定では、「自分がどんなテーマが興味があるか」を中心に、どんな研究(探究)をしたいかという研究計画を立てる必要がありました。

ところがChat GPTを使うことで、ぼんやりとしたテーマ設定から、テーマ背景を理解しながら、研究計画を提示してくれる可能性が出てきます。

 

となると、テーマ設定や課題設定で評価されるよりは、Chat GPTでは絶対に出てこない地域のデータの発見、社会に対して働きかけたことで獲得した自分の感覚(できた!/やったぞ!/失敗した…/次こそは! など)、そしてそこから何を自分が学んだのかが大切になってきます。

 

どこまでも「自分はどう考えるのか」「何を学んだのか」が求められる

Chat GPTはとことん情報(アイディアを含んだ)提供に向いているといえます。

教員との相性による授業の良し悪しや好き嫌いが生まれてきません。

言うなればSiriやOK Googleの類なのでしょう。Chat GPTに問うと必ず返ってきますが、その問い方が問題です。

その問い方に、”あなたらしさ”が生まれてくるからこそ、悪くいえば「あなたはどう考えるのか」がない場合、一般的な教科書的な回答しか返ってきません。

逆に自分はこう考えるけど君はどう?という形でChat GPTを使うことができれば、「対話」っぽいものが生まれる可能性があります。

 

また、Chat GPTが示してくれる回答は、一般的だからこそ、生身で獲得した情報や体験したこと、経験したことは、変え難いものになります。

「イベント運営して身についた能力を教えて」といえば回答が出てくるでしょうが、そこに経験値を持って語ることはできないでしょう。

 

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ということで、Chat GPTを探究活動でどう使うべきかを考えてみました。

条件をもっと絞れば、よりよい使い方が出てくるでしょう。

「Chat GPTによって教員が要らなくなる」とは思いません。

むしろ、Chat GPTでより効率的に情報を提示し、うまく使う方法を伝え、一緒に考えることが大事です。

ぜひうまくChat GPTを使ってみて、皆さんの授業や探究をもっと前に進めてみてください。

それではおのおの抜かりなく。