よく生徒たちが、「空き家」をテーマに地域探究活動を行うケースがあります。
大人たちとしてもそこに関わるのですが、これがなかなか難しい。
所有者の権利の関係で、使っても良い空き家があるかどうかというところからスタートしなければなりません。仮に使っても良いということになっても、使用料や家賃の問題、税金の問題もつきまといます。
こういう法律的かつ長期的な問題については、生涯探究学習プロジェクトとして取り組むべきだと思います。
生涯探究学習プロジェクト
生涯探究学習プロジェクト(LILP=Lifelong Inquiry Learning Project)なんて言葉はないので、造語として作っておきましょう。
LILPは、子供から大人まで幅広い年代が参画する探究の形です。
これって、別に地域づくりに子供たちが参画するってことなのでは?と思いがちですが、そうではなく、子供達の探究学習の中に、生涯学習として大人たちも入りこみ、学び直しをするという形を目指します。
学校ができる地域への貢献
学校が地域に果たすことができる役割を考えた時、それは人材の供給だけではなく、理論的な立場からの貢献にあります。教員が入ることで、地域に不足しがちなアカデミズムを補完できると考えます。
たとえばものを売るというプロセスを経る時、今では古いでしょうが、AIDMAやAISASなどを知っているのと知らないのでは、結果が異なるでしょう。
「人手が不足している、だから説明会を開く」というのはエビデンスベースではなく、そもそもデータはとっているのか、本当に説明会が必要なのか、AIDMAのどの部分が課題なのか、、などの分析が必要なはずですが、なぜか地域運営の場合は「なんとなく…」にしがちです。それよりも行動が求められているような気がします。議論ばかりで何も進まないのはよくありませんが、仮説を立てず行動するのは最初のうちはいいでしょうが、結果は生まれてきません。
高校生の探究学習に地域が入りこむ
その意味で、地域の方が高校生の探究学習に関わるというのは良いと考えます。
高校の探究の中では、理論的な補足や数字による把握が必要になるため、自ずと地域運営を見直すことができるかもしれません。
また、「空き家」のように長期間かかったり、法律的な知識・対応が求められる場合、1年間で終わることはないわけで、地域の側でその課題について向き合う必要があります。高校生が考えたテーマを地域も一緒に探究することで、その高校生が大学やその後の就職後にも関わる可能性も出てきます。
早期リクルーティングを考えても、メリットがありそうです。
「子供達の考えていることだからレベルが低い」のは当然ですが、だからこそ学校ではそのレベルを上げようと「理論」を用います(イノベーター理論とか使います)。
また、レベルが低いからこそ、大人たちに教えていただきたいという思いもあります。
ある種、地域での部活動や社会人クラブ、サークルのように異年齢の人たちが集まり、地域課題をなんとかしようとする姿はそれだけで教育効果があるものであり、ナナメの関係の人たちと小さな頃から関わることで、情報編集力が養われるものだと思います。
最終的には、高校の周りに地域と学校が生涯にわたって交わり続けるLILPがあり、その周りに企業や団体が囲むコンソーシアムを目指すとどうでしょうか。
LILPの本質は、生徒も大人も学ぶことです。同じテーマを一緒に活動することで、それぞれが学ぶことは違い、その学びを、学校や職場に持ち帰ることができるということです。
もっと言えば、LILPに参加するために受講料を取るという考え方もあります。
探究の活動するためには資金が必要になるため、会員費としてお金を取ることで受講に対するフリーライダー的な関わりはなくなるでしょう。学びに貪欲になるかもしれません。
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ということで、長期的な課題をテーマにおいた場合は、特に地域の方々も生徒と共に学び合える概念、LILPという考え方はいかがでしょうか。一つ、今後の探究のあり方を考える上で頭の片隅に置いてもらえるとうれしいです。
それではおのおのぬかりなく。