いつになっても試行錯誤と学びの毎日

とある教育コーディネーターが学校でやってきた実践と失敗の数々

高校魅力化はコーディネーターよりも「社長」がいるかが鍵

高校魅力化に携わって、8年が経とうとしています。

これまで、「高校魅力化にはコーディネーターが必須である」という趣旨の提言をなんどか見てきました。学校という組織に、外部人材を入れて、「チーム学校」を作り出すという意味ではとても重要なことだと考えていますが、コーディネーターという得体の知れない横文字を入れることが銀の弾丸ではないことは、以前こちらの記事で述べた次第です。

someunsungone.hatenablog.com

最近になって思うのは、コーディネーターではなく、社長が必要なのではないかということです。これは、今のコーディネーターを民間の社長にしろという意味ではありませんよ。ということで、今日のラインナップはこちら。

 

高校魅力化とは課題解決である

今はそうではない要素がありますが、もともと高校魅力化は生徒数減による高校の統廃合という課題がありました。

統廃合すると、高校がある地域が衰退し、人口減が加速していきます。

その原因になっているのは、高校の統廃合、その決め手になるのが生徒数となります。

 

生徒数増という課題解決のために、誰が、何をするのでしょうか。

その学校のある自治体はそもそもU・Iターン者確保のために地域の魅力をPRする必要があり、そのノウハウが溜まっていると考えられます。自治体は生徒を集客するという部分で強みがあり、かつそのノウハウを学校に共有することで、学校の発展が考えられます。

学校は、その学校でしかできない教育、学びを生み出すことを行い、生徒が活躍し、魅力を生み出していくことが求められました。

これが、平成25年頃から始まった高校魅力化のおこりです。

つまり、高校魅力化の始まりは、自治体と高校の課題解決と言えるのです。

 

しかし、魅力ある教育内容は課題解決のためとはいえ、直接的にそのサービス(という言い方は適切ではありませんが)を受けるのは在校生です。なので、教育の目的である「生徒の育成」という視点も重要です。

魅力ある教育をすることで、現在いる生徒が魅力ある人材に育ち、地域に対する良い影響や地域にUターンしてもらったり、故郷に錦を飾るということが期待されます。

 

高校魅力化という言葉の中には、生徒募集や魅力ある教育の創出という課題解決策があり、さらに魅力ある教育の創出は、在校生の育成という学校の別の施策に影響を与えます。

これが高校魅力化の特徴です。

課題解決のための施策が、また別の施策になっているという状態です。

 

手段が目的化している状態

こうした高校魅力化の始まりの中では、コーディネーターが必要でした。何を調整(コーディネート)するのかといえば、生徒募集の側面では自治体と学校、魅力ある教育の側面では学校と地域、です。

その地域(自治体、学校)にある資源を把握し、組み合わせる(マネジメント)ことで、資源を無駄なく使用し、成果を出すことが必要になります。

それがコーディネーターという存在だったのです。

 

ところが、今は主に「魅力ある教育」という側面にのみ「コーディネーターの必要性」が叫ばれています(これが、前述の記事にあたるものです)。

「魅力ある教育」という言葉に「魅力」が入っているため、高校魅力化とイコールになりがちです。ところが、もともと「魅力ある教育」は課題解決の手段でした。その「魅力ある教育」が目的化してしまい、何のためのの魅力ある教育なのかが問われます。

当然、教育機関なので、教育を行うのは当然なのですが、この文脈を知らないと、「今の教育で十分じゃない」となってしまいます。

「魅力ある教育」に絞った活動にするのであれば、「魅力ある教育」は課題解決なのだという考え方、誰にとっての何がボトルネックなのかを考えなければならないということです。

その結果、地域と学校をつなぎ、調整(コーディネート)することが手段だと思えば、コーディネーターを雇えば良いし、教える人が不足しているのであれば教員を採用すればよいと考えます。

 

高校魅力化という商品は誰の課題を解決するのか

こうしたことを考えると、高校魅力化の仕事の要件として求められていることが、生徒募集なのか、魅力ある教育なのか。あるいはその両方なのか。

またその商品を享受するのは誰なのかを見極め、適切に提案をしなければなりません。

 

もし、以前のような統廃合の危機という課題に対しての高校魅力化を提案するのであれば、生徒募集から魅力ある教育、さらに近年では資金調達まで、全てにフルコミットして課題解決を提案、実践する、ある種の起業家・社長的な人が必要になるでしょう。

 

魅力ある教育というサービスを提供するのであれば、さらに課題を深掘り、適正な価格であるかどうかを見極めなければなりません。その意味でも、起業家的な要素が必要になります。

場合によっては、教員の働き方改革、学校のDX化、ということだけでも、担当できる人は限られているはずです。

一体、自分の学校にはどんな人が必要でしょうか?

 

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高校魅力化はとても良いムーブメントです。

ある意味流行としてこれからも広く日本、あるいは世界に輸出してもよいものになっていくでしょう。

その時、コーディネーターという存在が鍵になるのであれば、その要件定義は必要不可欠であり、ボトルネックはどこにあるのか、その深掘りがとても重要になります。

今一度、うちの高校の、自治体のボトルネックはどこにあるのか、そのためにどのような課題解決をすればよいのかを考えてみましょう。

そして、その解決をするためにどのような人材が必要なのかを考えてみませんか?

 

ということで、おのおの抜かりなく。