いつになっても試行錯誤と学びの毎日

とある教育コーディネーターが学校でやってきた実践と失敗の数々

先生の働き方改革は、どのように考えればよいのだろうか?(後編)

前編の続きです。前編をご覧になられていない方は、こちらから。たくさん見てくださって、ありがとうございます。

someunsungone.hatenablog.com

 

前編では、先生の働き方改革を考える上での前提について触れました。

学校に与えられている6つの経営資源を、いかに投入し、事業の成果を上げていくのかが、学校という事業そのものですが、その経営資源を増やす・減らすという意思決定は、学校(公立学校)にはなく、教育委員会等によって決定されるということです。

そのため、すべての資源が限られている中で、成果を上げ続けるためには、数に左右されない、各個人が努力するしかない、という状況です。

働き方改革を進めるためには、このシステムを打破するしかありません。

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学校の事業成果は、6つの経営資源で成り立つ



学校が単独で経営資源を増やすことが難しい状況で、どうしたら事業成果(児童・生徒の学力や人間力を育てる)を上げ、先生が努力することを強要されないで済むのかが、働き方改革の肝です。

ちなみに、先生が努力しなくてもよいということではありません。先生は児童・生徒のために絶え間ない研究が必要ですが、先生が努力しなければ成果が出ないという、俗人的な仕組みであることが問題ということです。システムはどのような人であっても成果を出すことができるものであり、その上で、個々人の努力によって成果が何倍にも跳ね上がるというのが良いシステムだと考えています。

 

私は、コーディネーターとして学校と地域をつなぐ存在です。島根県は多くの自治体や学校でコーディネーターが配置されています。

この、コーディネートということ、「つなぐ」ということを解決策に考えてみてはどうでしょうか。

学校が6つの経営資源を自由に増減することができない、ということであれば、あるものと学校をつなぎ、6つの経営資源を自由に増減できる体制にすればよいのです。

 

顕著な例で、またすでに進められているものとしては、部活動ですね。部活動の顧問業務を、本当に教員が担うべきなのかは、議論すべきです。その結果、「部活動指導員、外部指導員」という制度が作られ、各学校が部活動の顧問等を選定しています。すべての学校で勝手に選定するわけではなく、教育委員会は、予算を配分しています。

経営資源で考えると、教員という「ヒト」や「時間」をほかに回すことができそうですが、一方で、教員以外の人を雇う「カネ」の捻出が難しいですね。だから、あまり改革が進まないのだと考えます。

 

私が取り組んでいるアイディアは、同じように外部指導員を増やすというものですが、所属が異なります。学校ではなく、地域と学校の間で、学校の外郭団体に所属させるというものです。

完全な民間企業・民間団体ではなく、学校も権限があり、学校外の人間も経営にかかわる第3セクターのようなイメージをしてもらえればよいでしょう。その団体が自主事業を行い、予算を自分で確保し、部活動指導員を雇うという考え方です。

その第3セクターを作り、その「ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産」をコーディネートし、学校が活用できるようにする、ということを私は行っています。

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学校外の団体の経営資源を活用する

先生の働き方を考える時には、この立場に立って、先生の仕事、あるいは授業の一部について、「これは本当に先生がやらないといけないのか」「ほかの団体に任せることはできないのか」ということを考え、その準備を行います。

例えば、先生は通常その地域の住民ではないことがあります。小学校や中学校は違うでしょうが、高校はほかの地域から移住(転勤)してきた方がほとんどです。

その地域の福祉を考える授業をする場合、その土地の社会福祉協議会に任せる方が、その土地に即した福祉を伝えることができるでしょう。その授業を企画し、司会のように進行するのは先生です。その内容を教えるのは社会福祉協議会、両者をつなぐのはコーディネーターという具合です。

テレビ番組と同じ仕組みですね。

テレビ番組はMCの人が、教材研究して、スライドを作ったりはしません。ディレクターやスタッフの人が準備し、ゲストと打ち合わせし、テレビ番組を作ります。でもテレビ番組のタイトルは決してスタッフの名前にはなりませんよね。

 

以上のような考え方に立ち、具体的にはどんなことをしているのか、を次回以降ご説明していきます。失敗はたくさんあります。その分得れたものもたくさんあります。

ご覧になっている方の近くにはどのような学校があるでしょうか。

もしその学校が苦しんでいるのであれば、「外部に任せることができないか」と思ってみてはどうでしょうか。すべては無理だとしても、一部は任せられるものもあるかもしれませんね。

 

それでは、おのおのぬかりなく。