いつになっても試行錯誤と学びの毎日

とある教育コーディネーターが学校でやってきた実践と失敗の数々

若手教員の中途退職に関する提言

先日、こういう若手教員の中途退職についての記事が出ていました。

www.sanin-chuo.co.jp

 

デジタル版だと全て読めませんが、過度な労働時間、サービス残業が原因というような内容でした。

実際に学校現場にいると、当然その通りなのですが、どうもそれは氷山の一角というか表面的なものだと思われます。

現在言われている、教員の働きすぎ問題は、教員一人一人の個人の問題に言及されがちです。

教員一人一人の問題ではなく、通常企業では、上司による労働時間の把握と労働内容の調整を行うはずで、業務を抱えすぎている場合は分担して課題解決を行うはずです。

 

分掌長の業務を減らす…難易度★★★★★

学校では分掌構造になっており、特に教員が少ない学校では、1人にかかる負担は大きくなります。分掌長は他の教員の業務管理をする体制ではなく、そもそも分掌長も一人用として同じ業務を行なっています。

分掌長は[授業]+[分掌業務]+[他教員のサポート]+[運営委員会などの会議出席]という業務を担っています。

 

業務一つに対して、管理と運営の2つの側面があるはずですが、運営に全振りしていると言ってもいいかもしれません。

年間行事予定や年間計画でおおよその業務の流れはできていますが、ほとんどが”記憶”に頼っているため、「そういえばそろそろアレの準備が…」とお尻に火がついた状態で動くのが現実です。

特に、若手になると、先輩職員が引き継ぎをするというわけでもないので、どうしたらいいか分からず、とりあえず前年度の資料を見ながら、ギリギリの〆切の連続でサービス残業にならざるを得ません。

若手教員の労働時間過多というのは、こういったことが背景にあります。

 

つまり、業務の適正な分配、業務を遂行するための支援(マニュアルや引き継ぎミーティングなど)が無いことによる問題です。

先ほど書いた通り、分掌長は他の分掌メンバーと同じような業務を担っているため、支援が難しい状態です。

なので、手っ取り早くこの状況を解消するためには、「分掌長の業務を分配する」というものです。その代わりに、他の分掌メンバーの業務遂行を効率化するためのサポートに徹するという「管理」業務を担ってもらうべきでしょう。

 

しかし、実際にはなかなか難しいと言わざるを得ません。まず、教員が業務を管理するためのツールが発達していません。教員文化、学校文化の中では、管理と運営の2つに分けるということがあまり発達しておらず、全員で物事にあたるのが通常です。

そういった文化の中で急に業務をなくすというのはハレーションが起きるでしょう。

 

1年間、業務管理部門を入れる…難易度★★★★

業務管理に特化した部門を外部から入ってもらうのはどうでしょうか。

1年間業務の管理を行い、引き継ぎなどを請け負う専門家です。管理部門がマニュアルなどを作り、次年度は分掌長がそのマニュアルをもとに実施していくという形です。

SSS=スクールサポートスタッフのように、教員の業務で誰でもできる業務をなくすことができるなら、管理業務をとってしまおうという発想です。

各分掌は相互に連携しあっているものの、統合した管理者は不在です。

そのため、各分掌に「民間分掌長」を作るという発想です。

ほとんどの学校で、使えるマニュアルになるでしょうから普及すれば一気に業務改善が広がるかもしれません。

 

しかしこれも難易度が高めだと思います。

そもそも民間校長ならいざ知らず、「民間分掌長」いわば中間管理職業務を、外部委託しても、誰がやるのでしょう。また、分掌長は各分掌の方針を策定するため、学校の中身に精通している必要もあります。

そういった人材を育成するためのコストがかかりすぎという問題があるでしょう。

 

その意味では、民間ではなく、教育委員会の中で管理部門を作り、各学校に配置するという手は打てるかもしれません。ただ、最低でも「総務・教務・生徒指導・進路・保健」の5つの分掌で入れるとしたら、各学校に5人の配属が必要です。教員不足が言われている中で、管理部門に5人入れるというのもハレーションが起きそうで、施策としての展開は望ましくありません。

 

特定の人たちだけ業務を取り除いたり、新たに人を雇うという施策はなかなか難しいため、個人の取り組みとして「がんばって早く帰ろう」と竹槍を持って飛行機を落とそうとすることや、「特定の行事を一切やめる(全員の業務を取り除く)」ということしか手が出せません。

 

各分掌にSSSを入れる…難易度★★★

SSSの導入ができるのであれば、むしろSSSを増やすという施策はどうでしょうか。

つまり、今の分掌構造を変えず、各分掌にSSSをつけるという戦略です。

SSSは9時-17時の時間が決まっているため、その時間内しか無理ですが、若手教員であっても、SSSに業務を振ることができるため、業務量は落ちるはずです。

また、業務を振るということに慣れると、先生の中で業務を管理するという方向に少しずつ進むのでは無いかと考えます。

他の施策よりも、予算は抑えながら、地域の人材を雇用できるので、雇用対策としてもいいかもしれません。

 

ただ、今までのSSSでは業務を振るための情報システムが確立されていません。スタンドアローンなので、教員ネットワークの中にSSSを加え、分掌の業務を肩代わりできる環境整備をすることは言うまでもありません。

 

情報が漏れるリスクは確かにありますが、そもそもSSSになるという時点で、個人情報の保護研修を受講していたり一定のPC作業スキルは確立しているはずです。

 

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というわけで、若手教員の中途退職の要因になっている労働時間の過多。

それをどうやって、「個人の問題」から「組織の問題」に切り分け、管理できるようにするかの提言をちょこっと書かせてもらいました。

 

個人的には、オンラインでサポートできるなら、サポートしたいものです。

それではおのおの、ぬかりなく。