いつになっても試行錯誤と学びの毎日

とある教育コーディネーターが学校でやってきた実践と失敗の数々

【授業作り大解剖!】授業をすることになったら…(前編)

先生のお仕事の中心であり、イメージされやすものが授業です。

前回の記事でも、根底に授業を載せておりました。

someunsungone.hatenablog.com

 

では、この授業とは一体どのように作っていくのでしょうか。

あまり知られることのない、授業づくりの方法についてご紹介しようと思います。

 

まずは、学習指導要領を確認します。

学習指導要領は、教員にとっての憲法や公理のようなもので、これに基づいて学習内容が決まります。なぜこの内容を教えるのか、という問いに答えるとしたら、「学習指導要領でそう決まっているから」と答えるしかありません。

覚えている方もいるかもしれませんが、円周率が3.14から3とすることになったこともあります。これも学習指導要領に基づいています。

 

とはいうものの、、現場でイチイチ学習指導要領を開いて、授業を作るという先生は見かけません。

基本的には「教科書」をベースに授業を組み立てる先生ほとんどでしょう。

教科書は、学習指導要領で書かれてある学習内容が網羅されており、多少の文言の差はありますが、おおむねどの教科書会社もほとんど同じ単元名で、誰が読んでも(転校しても)わかるように書かれてあります。

教員は、教科書を使い、何を教えるのかを確認します。

 

そして、その内容を、どのように教えるのかを考えます。

この「どのように教えるのか」に教員個々人のスキルが関わってきます。

ある人は、黒板にひたすら内容を板書して説明する(教育の世界では、「チョーク&トーク」と言われます)人もいますし、パワーポイントなどをプロジェクターに投影して説明する人もいます。

 

何が正しいということはありませんが、一つ確認しなければならないのは、「なぜそのやり方で教えるのか」ということです。ここで大事なことが、「ねらい」です。

 

学習内容は「学習指導要領」に基づいていますが、指導方法は「ねらい」に基づきます。教育の世界では、「ねらい」や「身に付けさせたい資質・能力」などと言い、民間企業的には「達成目標」「ゴール」「KPI」のことだと思ってください。

「ねらい」が「人と意見をぶつけ合い、新たな視点を獲得させたい」ということであれば、「チョーク&トーク」はあまり適さないだろうとわかりますよね。もっとグループ活動を多く取り入れながら、なおかつ学習内容を学んでもらうスタイルの方が良さそうです。

「もっと自由に」「もっとみんなと話しながら」が良いと思っている方もいるかもしれませんが、時と場合によります。例えば、「人の話をしっかり聞き、内省する視点を獲得させたい」のであれば、「チョーク&トーク」ということが良いかもしれません。例えば入学式の時に、新1年生が体育館の場所や入場の仕方などを、グループワークで決めるということはあまり考えにくいですよね。

いずれにせよ、ここでの指導方法は、唯一の絶対解はありません。先生たちは、受け持つ児童・生徒の様子を見ながら、ねらいに即しながら、授業手法を変えていきます。このように児童・生徒の様子を見ることを、「児童観」「生徒観」といいます。学習内容は全国津々浦々、ほぼどの学校も同じ内容ですが、そこにいる児童や生徒はバラバラなので、全く異なる授業手法が採られています。

 

児童や生徒の様子によっても指導方法を変えることもありますが、例えば扱う教材によっても指導方法を変えなければなりません。

仮に「自分にない視点を他人と協力しながら獲得してほしい」というねらいだとしても、分数を知らない人に、グループワークで2÷5は?と聞いても、そもそも「÷」はなんだ?となり、さっぱりわからないでしょう。その場合は、やはり知識として提供することも重要なことです。

ところが、例えば地域とSDGsがどのように繋がっているのかということを扱うのであれば、各々の経験、人生から考えるはずなので、これはグループで考えるべきかもしれません。むしろ教員が一斉授業で教えるというのはあまり適しません。

このように、扱う教材によっても指導方法を変える必要があり、それを「教材観」と言います。

 

先生たちは、授業をつくる時に、以上のことを踏まえて授業を組み立てています。

「この教材、うちの生徒たちにはどうだろうか?」「簡単すぎるでしょ」「いや、難しいんじゃない?」などと、職員室では会話が聞こえてきます。

 

この「学習内容」「ねらい」「指導方法」「児童・生徒観」「教材観」の5つの視点は、教育実習に行く時には、必須の視点ですし、特に「児童・生徒観」を持つのは難しく慣れないと思います。が、そのためにも学級に入って、どんな生徒たちなんだろう?話し合いがなれているかな?それよりも熱心に話を聞くタイプが多いかな?などと思ったり、クラス担任の先生と話しながら、掴んでいくことが大事です。

 

ここまでを前編として、次回は具体的に私がどのように作っているのか、を取り上げて実際のワークシートなどを載せてみようと思います。

 

それでは、おのおのぬかりなく。